麻薬

 

学生時代は 

ある程度 落ち着いた年齢になったら

恋はしないものだと思っていた

 

その当時、

それは『蒼い時代』特有の 

誰でもぐぐり抜けなければならない一種のはしかのようなものだろうと

なんとなく感じていた

 

 

 

人は、一生 恋をする

 

街を歩けば 

どこに行っても 流れている歌は 人を恋する歌ばかりだ

 

十代の頃の恋と、

たとえば、六十代の恋は違う

 

・・・そう、とても違う

 

人間が練れてくると同時に、

恋もやさしくなってくることもあるが

 

十代の頃は、すべてにおいて、ALL, or NOTHING だった

 

すべてを手に入れるか、

または自分のすべてを否定しなければならなかった

 

 

たくさんの経験を重ねるにつれて

自分との価値観の違いを許せるようになり

 

自分が受け入れられない部分を 

以前よりは相手の個性として尊重できるようになってゆく

 

愛と恋とが渾然一体となって見分けがつかなってゆく

 

しかしそれでもなお 

年齢に関係なく恋の激しさは襲ってくる

 

恋につかまれたら最後、

どんなに抵抗しても抗えない

 

冷静な気持ちを残したままのつもりでも

冷静でない行動を取っても自分自身が気づかない

 

 

恋は

誰もが素晴らしさを認めるが

とてもわがままだ

 

 

恋をすると

相手に要求するものが途端に多くなる

 

こうしてほしい 

こうあってほしい 

 

要求は ささいなことから 

大きなことまで 

際限がない

 

そして自分が要求していることすら

気づかないことが多い

 

 

一緒にいて楽な人 

気を使わない人よりも

 

一緒にいると苦しい人、

自分が情けなくなるくらい傷つくような人のほうが

 

人は別れられない傾向がある

 

 

 

恋の苦しみは一種の陶酔に似て 

麻薬のように心を離さなくさせる

 

 

そして魂の伴侶にめぐりあったと感じたとしたら

もう その事実からそらすことができなくなる

 

 

 

恋に限らず 

裁いてはいけない

人も我も

 

どちらか一方だけが正しいということはない

 

受け入れられない部分があるのなら

そこに目を据えない努力は必要になる

 

見据えればますます気になり、

 

気に食わない 

 

どんどんそれが大きく育つ

 

 

 

人はそれぞれ違う

我も彼も

 

 

恋は一瞬だ

 

すぐに執着になり

嫉妬になり

拘束に変わろうとする

 

 

恋はどんな法則も当てはまらない

 

どこからか借りてきた言葉で

自分の恋は語れない

 

スタイルがよいから 

美形だから 

家柄がよいから

 

人は恋しない

 

何の理由か自分でもわからずに、人は恋する

 

 

わけもわからず、

恋をすると心は苦しむ

 

自分の心と相手の心のスピードの違いで苦しむ

 

苦しさを逃れようと

いろいろなことをする

 

積極的な行動から、

天に祈る行動まで

 

 いろいろ いろいろ

 

恋は麻薬に似て 

一度覚えたら忘れられない

 

忘れ果ててしまいたいなら 

自分の心を凍結するしかない

 

 

恋はさまざまに変化する 

かたちを変えて

 

同じ相手と

恋をし続けていられる人たちほど

幸福はない

 

 

結婚式の誓いの言葉に

 

「病めるときも 貧しいときも・・・」という言葉があるが

 

ケンカをしたときも 

苦渋のときも 

 

 

「ふたりは、愛し合うことを誓いますか?」

 

 

 

 

恋の始め

 

  恋の途中  

 

 

 

旅の途中には 

草むらもあれば公園もある 

 

陽の当たる丘も 

静かなせせらぎの音も

 

新幹線に乗った人も 

誰もが途中で歩き出す

 

自分の足で

道を迷いつつ選びながら

 

2003.12.11