してない約束

 

日のあたるフローリングの床の上で、

布地にハサミを入れながら、しきりに考えていた

 

上野さんとの約束を果たさなきゃ・・

上野さんとの約束を果たさなきゃ・・・

  

  ふと気がついた

  

上野さんとは何も約束したことなどない

    

それどころか、知り合って間もない、

顔見知り程度の人

  

それなのに、これほどまでに強い思いが他にあるのかと思うほど

上野さんとの約束を果たさなければならないという、

いてもたってもいられないような思いがふつふつと湧きあがってくる

     

  

耐えられないほどの「やらなきゃ」という強い衝動にとらえられて、

何も手につかない・・・

     

自分自身の意思とは関係の無い『思い』が『行動』を支配している・・・

上野さんとの約束を果たしたいという強い思いが

それ以外のすべての行動をすることを はばんでいる

   

伸びをしてみても、コーヒーを入れてみても、

してもいない『約束を果たしたい』という思いが追いかけてきて

読みかけの本を開いても、

あまりに強いその思いが邪魔して文字を追うことができない

   

上野さんに言うことさえ出来ない、

だって、何を約束したのかさえも分からないのだから!

「していない約束」だから。

 

  

   

意を決して 上野さんに電話してみる

上野さんは、異業種交流会で知り合ったさわやかな青年

   

お茶でも飲みませんかと誘ったような気がするがもう覚えていない

  

何の話かと尋ねかける顔の上野さんに、

こんなに話しにくい思いをしたのは初めてだ

 

しかし、上野さんに会うと、「約束」の内容はどこからか出てきた

  

それは、生まれる前(!?)

まだ『魂』だけの存在だったころ

いま、まさに生まれ出ようと下界(?)に向かおうとしている私に

上野さん(の魂)が声をかけた

  

声をかけたと言う表現は適切ではないが

そういうことにしておこう

あの時のやりとりは心と心の直接のやり取りとでも言うのだろうか

何とも表現しがたいものがあるので。

 

これから生まれて経験する自分(上野さん)の人生の岐路に、

ちょうど私が立っているので

こっちだよ、と道を指し示して欲しい

    

私は(私の魂は)わかったとうなずいて(?)

上野さんより先に生まれ出た、という訳だ

 

だから、今、上野さんに、こっちだよって言わなければならないのだけど

人間界に生まれてその時の記憶をほとんど思い出せない今、

どちらに行ったらよいか、どうしても言えない、

ただ、今、上野さんが人生の岐路に立っていることだけは

伝えておきます

   

そういった内容だった

   

上野さんはかなり驚いていたが まぁ、それはそれで終わった

それ以後、上野さんと会う機会がだんだん減ってゆき

めったに会わない人になった

 

ここらへんまでは、以前のホームページに書いたが

最近、また違う異業種交流会で、再び上野さんにめぐり合った

  

今度は、鳳翔の一番弟子の古い友人としてでの登場でもあった

上野さんは相変わらずさわやかで

相変わらず適度な距離を置いての付き合いだった

   

先週?上野さんがちょっとした用で鳳翔のところに遊びに来た

その時、

なぜか鳳翔は上野さんに強くある方向を指し示したのだった

そちらに行ってはいけない、こちらにいらっしゃい、というようなことを言ったのだ

 

普段だったら預言の仕事の上でも

鳳翔がそんなに強固に主張することは無いのに、不思議だった

そんなことを言っても、

大抵の人は、崖のふちまで行ってのぞき込んで確認するまでは

引き返せないものだということがわかりきっていた

 

しかし、上野さんは違っていた

びっくりしながらも、心に留めておきます、と言ってくれた

 

あれから自分らしくない言動にずっとひっかかっていた

この項を書き直そうと読み返していたら

ふと、

もしかしたらあれは、今、このことなのかもしれないな、と気がついた

 

 

 

 

 

 

「お空の約束」と今では呼んでいる

そんな昔話が、今、帰ってきた

 

2003.10.19