たいせつな人

 

 

最初に

 

母にとって 父にとって 大切な赤ん坊だった

祖母にとって 祖父にとって 大切な孫だった

 

幼い頃、一緒に遊んだその子にとって、とてもとても大切な友達だった

 

理由はない     ただ 『たいせつ』だった

 

 

 

大人になるにつれて、『たいせつ』が あまりシンプルでなくなった

 

 

凹んだとき

自分が大切に思われていることを忘れそうになる

「駄目な自分」をもてあます

誉めてもらった記憶を忘れて 

くよくよと視線を落とすこともたまにはあって

そんなとき

 

 

自分が笑顔になれば それを見て元気になれる人がいる

 

忘れてはいけない

自分はたいせつな人

 

電話の声を聞けば、なぐさめてあげることもできる

自分はたいせつな人

 

勇気づけてあげた人もいた

笑ってはげました人もいた

 

自分はたいせつな人

 

 

まるでこの世の中すべてから忘れ去られたような孤独を感じたときも

いつでも 誰かにとっての自分は 『たいせつな人』であることに変わりはない

 

わたしでなければ出来ない話しかた

わたしでなければ出来ないほほ笑みかた

わたしでなければならない雰囲気

 

だれも代われない

 

 

かけがえのない 自分自身

たいせつなわたし

 

 

 

 

自分自身を見失って、

自分自身を愛せないと感じ、

自分自身を用なき者と感じるむなしさにとらえられているとき

 

誰かに愛を否定されたとき

世の中のすべてから拒絶されたような孤独感におちいり

自分自身を愛することさえ難しいことがある

 

自分だけがつまづいているように感じ

自分の周りを笑いながら人が追い抜いてゆくと感じる

 

誰もが自分が転んでいるところを見ていると思い

起き上がって歩き出すことさえ忘れてしまっている

 

人が人を否定するのは

自分自身から逃げようとしてるからだ

去っていった人は その人自身から去っていっただけなのに

 

逃げ去ってゆく人は 

古い自分を脱ぎ捨てたいとき

新しい自分になりたいとき

『古い自分』がまとわりついた相手を 否定し 押しのける

そうすれば

古い自分、嫌いになった今までの自分を 脱ぎ捨てられるかのように

 

立ち去ろうとする者は 自分を悪者にしないような理屈をひねり出し

自分自身の影を踏まないように 大急ぎで駈けて行ってしまう

 

 

そこに残る者は 違う空を見ている

空を流れる白い雲を じっと見つめている

 

人は詩人になり、哲学者になってもいいが

わすれてはいけない

 

 

たいせつな自分

 

 

そんなとき、宇宙がぐるりと一回転して 心が創造の海へ船を出す

人生で一番美しい錦(にしき)が織れる時間(とき)

 

 

2003.12.18