無料の罠

 

 

人の痛みを癒せるようになったころ

『やってあげる』のが 嬉しくてしかたなかった

 

「ねぇ、足が痛いんじゃない?」 (当時>自信があるような無いような、確認)

「そうなの。痛くて正座できないのよ。」

「やってあげる。」

 

そんな調子で 

誰か『やってあげる』人は いないかと 

いつもワクワクしていた

 

相手がビックリするのも嬉しかったし

感謝されるのも 気持ちが良かった

 

 

 

 

 

ピラミッド温泉のオーナーの足の痛みを 癒したことがきっかけで

毎週のように 遊びに行った

 

お風呂から出て 座敷の広間にいると オーナーがやってくる

そこにはオーナーの顔見知りの地元の人がたくさん来ていて

 

「この人は、この前、高いところから落ちて、

肘が痛くて伸びないんだけど、やってくれないかな。」

 

「この女性は、手の先がしびれて

農作業が出来なくなってしまったんだけど、ちょっとやってみて。」

 

そんな調子で 気軽に頼まれ

気軽に 

 

『やってあげて』 いた

 

人の役に立てるのが 嬉しくて 嬉しくて しかたなかった

 

 

 

 

 

 

しかし、ある時 転機はやってきた

 

温泉の治療師が辞めてしまったのだが、

宿泊客が治療をして欲しい、というのでフロントが受けてしまった

 

『私』がいるから、というのがその理由だ

 

 

 

オーナーは当然のように やってくれと言うし

マネージャーは

「もう お金も もらっちゃったからね。」 と 茶目っ気たっぷりに笑っている

 

 

当時のわたしは 「無料」なら いくらでもやりたいけれど

『有料』というのには いろいろな意味で 抵抗があった

 

聖人君主を気取っているつもりはなかったが

『有料』にすると なんだか 純粋じゃないような気もしたし

それに、せっかく 【授かった】

不思議な能力が 無くなってしまうのではないか とも 思った

<その当時はそう感じていた>

 

 

 

ところが

 ところが ・・・ ・・・

 

 

温泉の治療師が使っていた部屋、

【治癒室】で 待っていると

 

『客』が入ってきた

 

挨拶くらいはしたかも知れない

しかし ほとんど無言のまま

40分間(温泉のパンフレットには40分と書いてあったので40分間やった)

わたしの施術を受けると

終わったあとも 半ば上の空で 

すう〜っと立って 部屋の方へ帰っていった

 

 

 

わたしは どうしていいかわからないくらい 戸惑っていた

 

 

 

あまりに違いすぎる・・・

 

 

今までは、「無料」だった

 

 

時間もせいぜい 5分から10分

 

オーナーの、わたしの『能力』についての講釈があり

おもむろに紹介された相手の方は、

おそるおそる、

「お願いします。」

と 頼む

 

やってもらったあと、

 

相手の方は 何度も 不思議がりながら 

ものすごく喜んでくれて

わたしに向かって 感謝の言葉を 惜しみなく伝えてくれる

 

毎回、そんな繰り返しだった

 

 

 

ところが

初めての「有料の」客は

 

黙って来て

 横になって、 

 

終わったら

 黙って帰った

 

 

そんな感じだった

 

 「お金を もらっちゃった」

 と 言われたからには 

 一生懸命やったし

 

お金を払わせてしまったのだから、

それに見合うだけのものは感じて欲しかった

 

そして自信もあった

 

手ごたえからしても、

『効かない』はずはないと思うのだが

 

相手は無反応

 

これは ショックだった

 

今までは 大げさに言えば

 

 「感謝感激雨あられ」

 

という感じだったのが   → 無反応

 

 

気を取り直して

 

お金をもらってやる ということは 

こういうことなんだ と 自分に言い聞かせた

 

(ショック冷めやらぬまま)

 

 

 

それを境に 

ピラミッド温泉で 『氣功師』として 『有料』で 人を癒す ということになった

<当時は「氣功」なんて知らなかったので 今考えると冷や汗ものだが 前任の氣功師の後釜になった>

 

 

『有料』、つまり【プロ】になって いろいろと考え、感じたこと

 

まず、『有料』の「客」は 感謝しない (と感じた)

 → 治してもらうためにお金を払っているのだから 治って当たり前

 

次に、『有料』の「客」は ありがたがらない

 

  これも、オーナーがいくら講釈しても  

  商売であれば 『宣伝』として 受け取るから

  ある日 突然 能力が・・・なんて言っても 別になんとも思わない

 

それに わたしと仲良くしようとしない → 「客」だから。

 

それ以外にも いろいろあったような気がするが もう、忘れた 

今になっては どうでもいいこと だからだ

 

 

 

 

それよりなにより プロになって わたし自身の意識が 変わった

 

 

『無料』のときは、相手は遠慮がちに頼んでくるし 感謝してくれる

『やってあげる』 のが 嬉しくてたまらなかった

 

『有料』になったら、 感謝は当然無い  ・・・当たり前だけど

「無料」に戻りたいな と 思った

 

でも、『有料』の「客」の無反応が 逆にわたしを踏みとどまらせた

これこそ、わたしの本当の実力がわかる方法なんだと感じた

 

今までは 『無料』だったから

相手は最初から感謝しているし、反応もオーバーなくらい 大喜びだった

「客」ではなくて 「信者」に近かった

 

それに 知らず知らずに慣れてしまっていた わたしは 危ないところだった

 

 

それに 『有料』の患者の無反応も 今ではなぜだか理解できる

40分もやると 

終わったあとは 「アルファー波」になっているので 

ぼ〜っとなっているのだ

 

あとで 改めて 「楽になった」 

と 報告に来てくれる客もいて それを知ったのだが。

 

 

 

 

無料でやっていた頃、

脳梗塞でうまく口が聞けなかった人が

左手の指が動いたと驚いて

しつこく わたしを求めるようになった

 

きっと 口をきくことが良くできなかったのだろう

わたしの顔を見ると 毎回

「早く!やってくれっ」

と命令口調(私にはそう感じた)だったので

相手が面倒くさくなって、

プィッと背を向けた。

(『紹介』でこちらから出向いていたので通うのが大変だったのもある)

 

 

だって『やってあげている』んだから

 

 

 

 

 

今のわたしは

プロであれば 自分で決めた時間は きっちり やるし

求められた120%を目差している

 

依頼が入った瞬間、ピッ と スイッチが入って 背筋が伸びる

そしてそれは

現在やっている、「預言」をはじめとする すべての仕事に共通している

 

そして 何があっても逃げない

そういった【責任】も 感じている

 

アマチュアであったときには、夢にも想像つかなかった緊張が ここにある

 

 

 

 

 

 

世間知らずで甘ちゃんだった わたしに

きっかけを与えてくれた、ピラミッドのオーナーに 今も感謝している