月 

 

 

 

 

 

深い海の底から 月を見上げるように

誰からも忘れ去られているような 音の無い夜

 

世の中がすべて

扉の向こう側に行ってしまったかのように

 

 

ひとり

 

テレビの音さえも

どこか遠いところで 理解できない

 

ひとひらの木の葉でもいい 訪れて欲しい夜

体温を感じる声が聞きたい

耳を澄ませば 自分を呼ぶ声が聞こえて来る

 

幼い頃 自分を呼んだ あの声

晴れた日の校庭で 大声で自分を呼んだ あの声

 

夜の次は朝が来るように 雨の次は晴れ

波の向こうには島

虹の向こうには ・・・

 

 

 

明日になれば

誰かが「おはよう」と言い 世界が動き出す

暗い闇があったことなど忘れたように

 

夕闇せまるころ 人は思い出す

 

闇の中には 人の心の宝物倉がある

ひそやかに そっと

なにかが隠してある

 

明るい日に当たると

輝きを失ってしまうかもしれない微妙なゆらめき

 

乾きかけた心をうるおわせる『なにか』

昼間あったできごとを

色のついた夢にしてしまうような夜のしずけさ

 

漆黒の闇の中にこそ

秘密裡に隠された幸福の聖杯が眠る

 

やすらぎ

憩い

体を横たえて眠る

 

 

夜の空には月

 

明日もまた 夢見ることを約束するかのように

 

どんなつらいできごとも

昼間見た夢に変えて

 

 

 

 

2004.6.24