忘れたことなどなかったのになぜ 

 

 

 

 

忘れたことなどなかったのになぜ

出会ったときにわからなかったのだろう?

 

こんなにも

こんなにも

待ち続けていたのに。

 

 

 

 

 

その人は 初めから知っていたかのように

輝く瞳でほほ笑んでいる

それとも

自分には そう見えるだけなのか

 

 

謎のようなその人の内側は

どちらに行ったらたどり着けるのか

迷路に迷うばかり

 

 

    窓の外には月明かり

 

 

 

その顔の向こうには

いつも もうひとり 

 

何もかも知っているように

見つめ返してくる

 

 

 

互いの腕の中はあたたかくて

昔からずっとこうしていたことがわかる

 

互いの瞳を覗き込めば

もうひとりの自分が見える

 

 

その人と道を歩けば

いままで 本当は道を歩いていなかったことに気づく

 

その人と空を見上げれば

初めて本当の空を見たことを知る

 

初めて 本当に呼吸して

初めて 本当に人生を生きる

 

 

遠い潮騒の音が ここまで聞こえて来る

 

 

 

 

 

忘れたことなどなかったはずなのに

もう すべてが思い出せない

 

出逢ったそのときに

生れ落ちた瞬間と同じように

すべての記憶が抜け落ちる

 

あんなにも

あんなにも

待ち焦がれていたのに

 

なぜ忘れてしまったのだろう

 

その瞳の色

その目の輝き

その声の響き

 

あんなにも思っていたのになぜ

忘れてしまったのだろう

 

 

 

 

二人のまわりを 風が抜けてゆく

 

 

 

 

もう一度 目を見て

もう一度 ときめいて

もう一度 うなずいて

 

もう一度 胸を熱くするために

 

何度でも。

 

 

 

そのあとに続く

満たされたおだやかな時間を

さらに豊かに実らせるために。

 

 

 

忘れたはずなどなかったのに

それは夏の夕暮れ

 

それは電話の中の潮騒

 

街角の花屋

 

 

 

 

忘れたはずなどなかったのになぜ

 

 

 

春と季節がめぐる

また夏が来て

 

 

星はいつも夜空を飾っている

 

 

 

百億光年のかなたへも

「思い」は 一瞬で飛んでいける

 

 

その人への距離がどれだけあろうとも

「思い」は 鉄の壁をすり抜けてゆく

 

 

螺旋(らせん)を描きながら

星空に昇ってゆく

ふたりはふたりであって宇宙の∀(すべて)

 

 

 

過去は存在しない

すべて未来に置き換わる

だから

 

過去を塗り替える

思い出の中で。

 

 

どんな過去も自由自在

自分の絵筆は思いのまま

想い出は 美しく彩られる

 

 

これから起こる未来のこと

 

いろとりどりの錦のなかを

ふたりで歩いてゆく

 

 

 

 

忘れたことなどなかったのになぜ

出会ったときに思い出さなかったのだろう?

 

こんなにも

こんなにも

約束していたのに。

 

 

 

不安が忍び込まないように

いつも一緒にいよう

お互いの夢の実現のために

 

 

 

不安になったら星を数えよう

ふたりが生きてきた過去の愛の数だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2004.7.6