芸者の話 

 

 

子供の頃 父に聞いた話

 

 

温泉街の芸者が

夕暮れ時、『ご出勤』のため、山道を歩いていた

 

温泉街に行くには、二箇所の古いトンネルを抜けなければならない

 

着物を粋に着こなして

芸者が、その狭くて古いトンネルを歩いていると

 

車にはねられてしまった!

 

車は、急停車したが、

怖くなったのか、芸者を助けることなく、そのまま行ってしまった

 

 

 

ひどく怪我をして 出血している芸者は、

このままでは命が危ないと思い

必死の思いで、通りかかった車に向かって手を振った

 

 

 

車はトンネルに入ってスピードを緩めて来るが

芸者に気づかないのか、

逆にスピードを上げて 走り去ってゆく

 

何台かの車をやり過ごしたあと

芸者は 力尽きてしまった

 

 

すると そこに 先ほどの車が戻ってきた

怪我をしている彼女を乗せて

病院に着くと

そのまま彼女を病院の玄関に残して 走り去ってしまった

 

病院の職員が発見したときは

彼女は虫の息だったそうだ

 

 

あとで、芸者を車ではねた男が名乗り出た

同乗していた男の『彼女』が、その病院に勤務する看護婦だったそうだ。

 

 

 

 

 

 

「おとうさん、どうして手を振っているのに 車は停まってくれなかったんだろう?」

 

「そりゃあそうだよ

 芸者が 出勤途中に 車に はねられたわけだから

 夕暮れ迫る山道のトンネルで

 着物を着て 血だらけになった女が

 髪ふりみだして手を振っていれば

 みんな 停まるどころか、アクセルを踏むだろう。 」

 

 

 

         たしかに ・・・ 条件が そろいすぎている

 

今も、

『あの』山道のトンネルで、着物姿の幽霊に出会ったと

思い出語りをしている人がいるかもしれない ・・・ ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで、

わたしの友達のEは なかなか人がワルイ

 

彼の知っている田舎の

たんぼの脇に流れる小川で

清水が湧き出ているところがあった

 

朝早くには

周りとの気温差で

その清水が湧き出ているあたりは 白いもやがかかるそうだ

 

そこで

彼の友達がいたずらを思いついた

 

映写機をセットして

その白いもやに 幽霊の姿が映るようにしたのだ

 

白いもやが動くと

まるで生きているように(!?) 見えたらしい

 

 

朝早く そんなところを通るのは

新聞配達くらいだ

 

というわけで

バイクに乗ってやってきた新聞配達の男性は

ビックリして転倒し、

あわててバイクを起こして 逃げていったそうだ

 

 

そんな手の込んだことをするやつは

『Eの友達』ではなくて、『E自身』じゃないかと 密かに思っている・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2004.5.10