思い出夜曲  

 

 

 

なつかしい歌が流れる

あの人の思い出とともに

 

   忘れ 捨てたつもりの

   忘れさせてくれない あの歌

 

 

 

自分から

別れを告げた者は 振り返れない

 

あふれる思いにとらえられて

きっと 駈け戻ってしまう

 

 

 

旅立ちながら

遠く 空を見上げる

 

なにかがこぼれ落ちないように

 

 

はるか遠いところから

風が吹いてくる

 

     忘れるな

       忘れるな

 

歩いても

歩いても

どこにもたどり着けない

 

風がまわりを渦巻く

忘れたい思いを吹きつけて

 

 

こみあげてくる思いを

深い森の どこに隠そう

 

森の木々はささやき

どこからかとどろく瀑布の音

 

 

 

置き去りにしてきたはずの

その人の あたたかさが 心を貫く

 

惹きつけられながらも

逃げ出さずにいられなかった

 

自分自身を取り戻すために

自分自身だと思っていた、自分を取り戻すために

 

 

 

けれどもう

知ってしまった

 

この同じ空の下に

あの魂があることを

 

 

思い出すたびに

胸が切り裂かれる

 

 

 

 

 

いつか

いつか 時が流れて

 

 

ふいに聞こえる

あの曲

 

 

胸を突く  ・・・思い

 

 

 

耳をふさぎたい

        ・・・もう一度聞きたい

 

あの時は帰らないのに

時計の針が

逆に回るかのように

 

その曲に深呼吸したい

 

 

すくいあげても

こぼれ落ちてゆく 時の砂

 

 

忘れたわけじゃない

でもそれは

 

心の奥底にしまった、

古いアルバムの中の写真

 

 

   しあわせでいるのでしょうか?

 

そんな言葉がこぼれ落ちる

初夏(はつなつ)の宵(よい)

 

 

2004.6.16