夏の宵 

 

 

夏の宵

どこからか さざめく女たちの声

 

途切れがちに聞こえて来る

小さな花火の音

 

ひとり窓辺に月を見れば

誘いかけるような

夜の風

 

 

 

どこからか

誰かが自分の名前を呼んでいる

 

でもそれは遠い明日

 

 

いやいや

それは すぐそこ

 

 

遠慮がちに

しかし なつかしさに満ちて

その人の声はする

 

いままで誰も聞いたことがないような声で。

 

 

 

誰一人

予想もつかなかったような

それは真夏の滝の飛沫

 

 

森閑とした木々の梢の高い空から

ビルの谷間から

 

 

その人は

まるで何気なく

当たり前のように現れる

いままで、ずっとそこにいたかのように。

 

 

 

ひとりきりの旅が ふたりになる

 

 

 

 

 

 

 

それは、夕暮れ

どこからか聞こえて来る子供たちの歓声

 

誰かが誰かに話しかけながら通り過ぎてゆく

 

 

急ぎ足で通り過ぎてゆく白いパンプス。

 

 

「あら?」  という低い声

 

 

 

なにもかもが 新しい。

 

 

 

 

 

 

まっすぐに目を見て。

 

そして

何も言わないで。

 

 

運命の出会いは

劇的とばかりは限らない

 

しかし

出逢った瞬間から、

すべてが舞台の上でスポットライトが当たる。

 

 

なんという運命

なんという偶然

なんという必然

 

なんという素敵な物語

 

 

 

 

手を伸ばせば

届くのに、

ただ見ているだけ。

 

 

何を迷うのか・・・

 

 

 

 

手を伸ばせば

 

驚いたように

その人は振り向いて

そして

やわらなかな微笑で じっと見るだろう

 

まるで

近視の人が まじまじと見つめるように。

 

 

いままでずっとここにいたのに

なぜ気づいてくれなかったのかと言わんばかりに。

 

 

 

運命は

自分の心に 剣を刺す。

 

知らぬ間に、それは胸の奥深く届いて

引き抜こうものにも、

深すぎて、もう、手の施しようもない。

 

 

世界中の誰でもいいのに

世界中の誰もが違う

世の中の半分は異性なのに

自分の片割れは まだ見つけることができない

 

それは、魂があまりにも近視だから

 

 

すぐそこにいる

 

 

そう、

すぐ そこに。

 

 

 

 

 

2004.7.25