忘れかけた初々(ういうい)しさ    2004.10.31

 

 

 

愛を 告げる言葉は

いつだって 耳に心地よい

 

たとえそれが ぎこちないものであっても

 

 

 

 

利己愛と博愛との間の

どこにも線を引くことはできない

 

 

愛を求めるから 愛を告げる

 

 

求めない愛など

有り得ない

 

 

 

 

 

 

愛を返すのも自由

ただ 見ているのも自由

 

背を向けて 駈け去ってゆくのは

ただ 愛に怯えているから

 

 

 

 

幼子(おさなご)は ただ存在するだけで

愛くるしい

見つめられれば まっすぐ見返し

疑うことを 未だ知らない

 

 

愛を告げられて 戸惑うのは

心の扉が ギシギシとうまく開かなくなっているからに過ぎない

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて自分に愛を告げた者が

いつまでも自分を思い続けている という幻想

 

 

 

 

捨てたつもりで 囚われている思い込み

 

 

 

一日の大半が 思う人で占められていた日々

 

 

 

 

細胞のひとつひとつが

その人の名を叫んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつとはなしに

そんなことさえ 遠い記憶のかなたへ消え

 

 

こうであれば、こう

ああならば、こうなる 式の

計算づくの 人間関係をなぞっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて 心は

いつも青く澄んだ海の 波打ち際に立ち

寄せては返す波のかなたに

透明な心を 空高く飛ばしていた

 

 

 

 

 

 

その人の目の中には

海が広がり

波の音が聞こえて来る

 

 

 

言葉を尽くしても

尽くしきれない

 

 

言うに言えない

 

 

 

 

街のざわめきの中に

海の潮騒の中に

耳を聾する工事現場の騒音の中でさえ

 

 

 

静けさがある

 

 

 

 

 

 

 

時が止まり

 

 

瞳と 瞳が出会って

ものを言わぬ

 

 

 

まだ

  始まったばかりの

                 旅の途中